【アニメーション12の原則】Arcs (運動曲線)とは -命を吹き込む魔法-

今回はディズニーの本『The Illusion of Life』に書かれているアニメーションの12の原則の『Arcs (運動曲線)』についての内容を詳しく説明していきます。

実際に『The Illusion of Life』に書かれている内容や、この原則が使われているディズニー映画のシーンも合わせて説明していきます。

アニメーションの12の原則の内容を簡単にまとめてあるページもあるので、ぜひそちらもご覧になってください。

 

Arcs (運動曲線)

現実での自然な動きの軌跡のほとんどは曲線(Arc)を描いています。
アニメーションでもこの『曲線を描く動き』を意識することで、現実に近い動きにすることができます。

人間をはじめ骨格のある生き物の動きは、ほとんどこの曲線を描く動きをします。
腕の動きを意識して見ると、関節(肩)を中心とした円運動をしていることがわかります。

参考:『Principles of Animation – Arcs』より

これは肘だけでなく身体全体の関節にいえることです。
歩いているときの脚の動きや腕の振りなどはすべて曲線を描いています。

また、物が投げられた時に描く放物線や、ボールのバウンドの軌跡も曲線です。
バスケットボールのフリースローをイメージするとわかりやすいですが、物が投げられた時はキレイな放物線を描きます。
ボールがバウンドする時の軌道も直線的な動きをすることはなく、なめらかな曲線を描きます。

参考:『Principles of Animation – Arcs』より

これらのように現実の世界で『曲線(Arc)』は自然にあらわれる動きです。
その動きを意識的に取り入れることで、よりリアルなアニメーションにすることができます。

生きものの中には、機械のようにまっすぐ前後へ、上下へと体を動かせるものはほとんどない。キツツキや、硬い外殻をもつ昆虫は例外かもしれないが、動物の動きは普通はかすかな曲線を描く。頭部が前後に動くときも、前に突き出されるときは軽く上がり、後ろに戻るときは下がる。そうなるのは、重量や、高等動物の体内構造のせいだと思うが、とにかく、ほとんどの動きはある種の曲線を描いているのだ。

生命を吹き込む魔法 –Illusion of Life–』p.66より

 

『曲線(Arc)』を取り入れることでリアルなアニメーションにすることはできますが、注意するべき点もいくつか存在します。ここでは重要な2つの注意点を説明します。

1つ目は、『物体の速度によっては曲線を描かない場合もある』という点です。

ボールを投げるとき、バスケットボールのシュートのような速度だとキレイな放物線が描かれます。しかし、野球のピッチャーが投げる豪速球はほぼ直線の動きになります。

下の画像は『力学シミュレータ 放物運動』でシミュレートしたボールの動きです。
上のボールのほうが速く、下のボールのほうが遅い動きをしています。

動きを見ると速いボールの軌道は直線、遅いボールの軌道は曲線を描いていることがわかります。
このように物体の速度は速いほど曲線から直線の軌道へ変わっていきます

これを意識せず、どの動きに対しても同じような『曲線(Arc)』を取り入れてしまうと、逆に不自然になってしまいます。そのため『曲線(Arc)』の動きをつくるときは、物体の速度にあわせて曲率を変えてあげる必要があります。

 

2つ目の注意点はStaging(演出)の内容と関連する『見せ方』についてです。

人型のキャラクターが「前へならえ」の動きをした時を想像してみてください。

横から見れば手の動きの軌道はキレイな円弧を描きます。
しかし、キャラクターを正面から見たとき、その軌道は直線運動をしているように見えてしまいます。これは『Staging』のシルエットと同じような考え方で、できるだけ避けたい構図です。
3次元的に見たときに曲線を描いたとしても,2次元的に見たときに曲線を描いていないと効果的ではなくなってしまうためです。

アニメーションでは3次元的な動きだけではなく、2次元的に見たときにも曲線を描くように常に意識して動きをつける必要があります。

 

ディズニー作品での実用例

曲線を描く動きは、ほぼすべての動きに取り入れられているものです。
意識して見ると、どのシーンでも曲線(Arc)が描かれていることがわかります。

映画『ベイマックス』(2014)より

このシーンのゴーゴー・トマゴ(黄色いスーツ)の動きにはキレイな曲線(Arc)が描かれています。
特にわかりやすく表れているのは、大きく動かしている脚の動きです。
また投げた仮面もきれいな放物線を描いています。

脚の動きだけでなく、頭の位置を意識して見ると曲線を描いていることがわかりますし、仮面を投げるときの腕の動きの軌跡も曲線(Arc)を描いています。

 

映画『ターザン』にも曲線(Arc)の動きが、かなり出ているシーンがあります。

曲線(Arc)は人工物よりも自然界の動きのほうによく表れます。
そのため『ターザン』にはわかりやすく曲線(Arc)を描いている動きがとても多く見られます。

 

この動画の02:13から最後までのシーンは、ディズニーの作画力に圧倒される名シーンです。

ターザンの動きはすべて曲線(Arc)を描き、とても気持ちよく観ていられるものになっています。
木の配置や形もターザンの動きを引き出すために考えられて作られています。

このシーンの動きは1カットで表現しているためカメラワークも大きく変わります。
その動きも直線的なものではなく、回り込むような曲線を描いた動きになっています。

 

 

まとめ

アニメーションを作ったことがある人は、この原則を知らなくても曲線(Arcs)は取り入れていると思います。入れないと逆に不自然な動きになってしまうため、原則を知らずとも通常は取り入れているはずです。

アニメーションは基本的に、現実で起こる動きは忠実に再現することが大前提です
そこから世界観に合わせ超能力や魔法、誇張表現など現実には起こりえない動きなどを取り入れていきます。この大前提を押さえておくことで魔法などが出てきても、そのアニメーションには説得力が出てくるのです。

そのため現実で起こる動きである曲線(Arcs)は必ず意識して取り入れる必要があります。

2019年9月3日ディズニー, 映像制作, 映画

Posted by Lic