【アニメーション12の原則】Slow In and Slow Out(両端詰め) とは -命を吹き込む魔法-

今回はディズニーの本『The Illusion of Life』に書かれているアニメーションの12の原則の『Slow In and Slow Out(両端詰め)』についての内容を詳しく説明していきます。

実際に『The Illusion of Life』に書かれている内容や、この原則が使われているディズニー映画のシーンも合わせて説明していきます。

アニメーションの12の原則の内容を簡単にまとめてあるページもあるので、ぜひそちらもご覧になってください。

 

Slow In and Slow Out(両端詰め)

キャラクターが走り出すとき急にスピードが出ることはありませんし、止まるときにいきなりスピードが0になるということはありません。 

生き物の動きをはじめとしたほとんどの動きは常に等速ということはなく、徐々に速くなったり遅くなったりと速度は変化して動いています。

例えば振り子の動きですが、下図の左側のように等速では動いていません。
右側のように1番下に向かうにつれて徐々に速くなり、上に向かうにつれて徐々に遅くなる動きをします。

下の参考GIF画像はどちらも同じフレーム数でアニメートされた振り子の動きです。
フレーム数が同じなため振り子が最上部に到達するタイミングはどちらも同じですが、最上部に到達するまでの動きが違います

参考 :Even :SlowIn Out』より

振り子の軌跡にある『赤い点』は、1フレームあたりの振り子の動いた距離を表しています。
左側の振り子は赤い点の間隔が一定な等速運動に対し、右側の振り子の赤い点は広がったり狭まっているため徐々に速度が変化しています。
2つを比べてみると等速よりも、速度がだんだんと変わる左側の振り子の方が自然な動きをしているということがよくわかります。

もう1つ例を挙げると、ボールのバウンドの動きも徐々に速度が変わっています。
下の画像はボールのバウンドの動きを一定の間隔で撮影したものです。
バウンドの最上部付近で振り子同様、徐々にスピードが変化していることがわかります。

参考 Slow in and slow out–』より

このように自然な動きのもので等速なものはほとんどなく、動きの始まりと終わりの速度は徐々に変化するのが普通です。
このとき、動きはじめから徐々に速くなっていくことを『Slow Out』
動きの終わりに向けて徐々に速度を落としていくことを『Slow In』といいます。

 

『Slow In』『Slow Out』は生き物の動きにも必ず取り入れられる動きです。
私たちが無意識にやっている動作で等速なものはありません。
むしろ等速運動は「等速な動きをしよう」という意識をしてはじめてできる動きです(厳密に言えばそれも等速ではないでしょうが)。
そのためキャラクターの動きも等速にしないように意識する必要があります。
等速な動きにしてしまうとキャラクターの動きが機械のようになってしまい、生きているキャラクターを作り出すことができません。

これは手描きアニメーションも3DCGアニメーションも常に意識をする必要がありますが、特に3DCGアニメーションを作る時には、より意識する必要があります。

手描きアニメーションの場合、振り子やボールの動きのように動きと動きの間隔を意識して徐々に速度の変わるような絵を描いていけば『Slow in』『Slow out』は取り入れることができます。
しかし3DCGアニメーションは手描きアニメーションと違い、コンピュータによって自動作成される動きが出てくるため注意が必要です。
3DCGアニメーション作成ソフトは、2つのキーとなるポーズを決めるとその間の動きをコンピュータが自動で作成してくれます。それを少しずつ修正して動きを作っていくのが3DCGアニメーションの作り方です(詳しくは別の12の原則『Straight Ahead Action and Pose-to-Pose Action(逐次描きと原画による設計)』を参照してください)。

このとき、コンピュータによって自動で作られる動きは等速な動きとなっています。そのため違和感のない動きが自動で作られたからといって、速度は変えずにそのまま使ってしまうと速度が一定の機械的な動きのキャラクターになってしまいます。
そうならないためにも作られた動きの速度を編集する必要があります

下の図は動きと時間の関係をグラフに表したものです。
時間(time)が進むにつれて動き(motion)も進んでいきます。コンピュータによって自動で作られる動きは、左図のような直線の関係(等速運動)になっています。
CGアニメーションの作成ソフトでは、この時間と動きの関係を編集することができます。
左図のような直線の関係ではなく、右図のようなスプライン曲線の関係にすることですぐに『Slow In』と『Slow Out』を取り入れることが出来ます。

 

ディズニー作品での実用例

全てのキャラクターの動きには『Slow In』と『Slow Out』が取り入れられています。
ここで挙げる例はあくまでも一例で、基本的にはどの動きも一定な速度ではありません。

映画アラジンの以下のシーンを見てみましょう。
アラジンが歌いながら軽快に逃げる冒頭のシーンです。

映画『アラジン』(1992) より

この動きの軌跡の輪郭(シルエット)を一定の間隔で表すと以下の画像のようになります。

動き始める位置と右側のタルに乗っている位置では、『青い線』がいくつも重なっていることがわかります。対してこの重なっているポーズの間をつなぐ軌跡は数枚の動きしか描かれていません
さらに、タルからジャンプする動きを見ると、徐々に速くなっていることがよくわかります。
つまりこの動きは『Slow In』と『Slow Out』が取り入れられている動きということです。

ここに他のアニメーションの12の原則『Squash and Stretch(潰しと伸ばし)』『Anticipation(予備動作)』が加ることで、さらに自然な動きなっています。このようにアクションの速度を意識することで機械的ではなく、生きているキャラクターを作り出すことができます。

 

 まとめ

今回はSlow In and Slow Out(両端詰め) についての内容でした。

物理の法則を知らない人でも摩擦や重力などの力で物体の動きが変化するということは、これまでの人生経験でなんとなく理解しているはずです。
そのため速度が変化しない等速な動きのものを見るとどこか違和感を覚えてしまいます。
この原則の重要なポイントは動きのスピードが徐々に変化するということであり、物理法則をしっかりと再現しているかではありません。

本当にリアルなアニメーションの場合はしっかりと物理法則をシュミレートして入れてみるのもいいですが、アニメーションなのでそこに深いこだわりを持つ必要はありません。
むしろアニメーションだからこそ多少誇張した動きにして、よりダイナミックに見えるようにしたほうがキャラクターの魅力も作品のクオリティも上がると思います。

どこか違和感のある動きも、速度を変えるだけでその違和感が消える場合もあります。
アニメーションを作る時に特に意識していなかった方は、ぜひ動きのスピードを意識してアクションを作ってみて下さい。

2019年4月7日ディズニー, 映像制作, 映画

Posted by Lic