【アニメーション12の原則】Staging(演出)とは -命を吹き込む魔法-

今回はディズニーの本『The Illusion of Life』に書かれているアニメーションの12の原則の『Staging(演出)』についての内容を詳しく説明していきます。

実際に『The Illusion of Life』に書かれている内容や、この原則が使われているディズニー映画のシーンも合わせて説明していきます。

アニメーションの12の原則の内容を簡単にまとめてあるページもあるので、ぜひそちらもご覧になってください。

 

Staging(演出)

本記事ではStaging を以下の4つに分けて説明していきます。

・カメラワーク
・画面のレイアウト
・演出方法
・シルエット

これらの考え方を意識して取り入れることでより効果的な『演出』を行うことが出来ます。

この原則の最も重要な点は、何に注目させ,何を無視させるかです。
注目させたい部分をいかにして注目させるかを考えること、それがこの原則 の真髄です。

 

この動画は本記事でいう4つの考え方に分けていませんが、わかりやすくまとめてあるのでぜひご覧になってみて下さい。

 

カメラワーク

アニメーションをはじめとした映像作品では画面に何を映し、何を映さないか、映す場合はどのように映すかが重要になってきます。

たとえば大きなモンスターの巨大感を表現したい時、上から見下ろすアングルのカメラワークよりも、下から見上げるアングルのほうが迫力が出ます。
逆に小さいキャラクターをより小さく見せたい場合は、上から見下ろすアングルにした方が効果的です。

参考:映画『シン・ゴジラ』(2016)より

 

カメラのアングルをキャラクターの目の位置にし、そのキャラクターの一人称視点にする表現もあります。

この視点で主人公たちをとらえることで、何者かが近づいてきたということを説明できます。
またカメラの高さを調整することで、そのキャラクターの大きさも表現できます。

一人称視点を使うことで見ている人は「どんなキャラだろう?」「かなり巨大なキャラだな」など期待しながらもある程度のAnticipation(予備動作)をすることができるため効果的です。

参考:映画『ジュラシック・ワールド』(2015)より

 

表現方法としてあえて映さないという手法もあります。

映画『ジョーズ』(1975)はあの時代に公開したからこそヒット作になったとも言われています。

その理由はCGなどの技術がまだ発達していなかったためです。
スピルバーグは「あの頃に今と同じ技術があったら、ジョーズは駄作になっていた」といいます。

“Well, I think if I had the computer, and if I had digital artists the way we have them today, in 1975, ’74 – I probably would have ruined the movie, because you would have seen nine times the amount of shark. And I think what makes the movie is the dearth of shark.”

「そうだね、もし当時(1975, 74年)に僕がコンピューターを持っていて、今みたいにデジタルアーティストがいたら、駄作になっていただろうな。なぜって、9倍はサメを見せていただろうから。あの映画が評価されているのは、サメがほとんど出てこないからだと思うよ。」

geektyrantSteven 『Spielberg Says CGI Effects Would Have Ruined JAWS』  より

『ジョーズ』はサメがほとんど出てこないということで逆に恐怖感を演出したのです。
人は『見えないけれどそこに何かがいる』ということに恐怖を感じます。
つまり映像作品では何でもかんでも映せばいいということはなく、あえて映さないという表現方法もあるということです。

これらのようにカメラワークを少し意識するだけでも、作り手の意図を効果的に表現することが出来ます。カメラワークでの表現は様々で作り手のセンスやアイデアが現れるところでもあるので重要なポイントです。

 

画面のレイアウト

映像作品は画面の中でストーリーを描き伝えます。
その限られたキャンバスの中で作品を効果的に表現するには画面のレイアウトを考える必要があります。

画面のレイアウトはキャラクターを画面のどこに配置するか、周りの風景(建物や植物など)をどのように配置するかが重要になってきます。

以下の2つのレイアウトがあった場合、左のほうがいいというのは素人目に見てもわかります。
しかし、あえて右のレイアウトにするというのもアリです。右のレイアウトにすることで左のスペースで何かが起きるのではないかと予想することができます。つまり実際に左のスペースで何かを起こすのであれば右側のレイアウトはAnticipation(予備動作)を取り入れたレイアウトであるということです。

画面のレイアウトは重要なもので、レイアウトを変えるだけでシーンの意味が変わってきたりします。Anticipation(予備動作)でも説明していますが、画面のレイアウトによっては予備動作の役割を果たす場合もあります。

後述しているディズニー作品での使われ方を見るとわかるように、キャラクターに目線がいくような画面レイアウトの方法もあります。

これらのように画面のレイアウトによって意味が変わったり、伝えたいことをより効果的に伝えられたりするように、作品を作る時は常に画面レイアウトを意識する必要があります。

 

演出方法

映画でよくある演出方法で『悲しいシーンでは雨を降らせる』というものがあります。
涙を流すキャラクターだけではなく、雨を降らせることで、より効果的にキャラクターの悲しみを表現することができます。

このようにキャラクターの仕草や周りの雰囲気を使って見ている人により深く感情移入をさせる『演出』は非常に重要な表現です。

参考:映画『アメイジング・スパイダーマン』(2012)より

 

こういった『演出』がわかりやすいのがホラー映画です。ホラー映画は観客に恐怖感を与えるものなので、必ずといっていいほど恐怖となる対象物が出てきます。
邦画でいえば『リング』の貞子,洋画でいえば『13日の金曜日』のジェイソンなどが有名ですね。

彼らは恐怖の対象として描かれていますが、彼らの存在をより引き立てているのが『演出』です。

基本的にホラー映画の恐怖を感じるシーンは暗い場面が多く、夜や、照明のついていない部屋の場合がほとんどです。さらに雨を降らせることでより恐怖感を煽ってくる場合も多いです。

参考:映画『13日の金曜日 PART3』(1982)より

晴天の朝、お花畑の中をジェイソンに追いかけられるシーンを想像してみてください。

ホラー映画というよりはギャグ映画に近いですよね。
このようにキャラクター自体が恐くても、舞台や雰囲気によって伝わり方は全く違うものになってしまいます。

演出は映像作品には必ず必要なもので本にも書かれている通り、見ている人に作り手の伝えたいことを100パーセント伝えられるような正しい演出を行う必要があります。

〈演出〉は、様々な分野に適用され、演劇の中でも古い歴史をもつ、最も普遍性の高い原則だ。しかし、その意味は厳密に決まっている。演出とは、あるアイデアを、どこをとっても間違いようのないほど明確に提示することだ。アクションなら内容を理解できるように、キャラクターなら誰だか見分けがつくように、表情なら見てとれるように、雰囲気なら観客の気持ちを動かすようにする、それが演出である。正しく演出されれば、それぞれの要素は観客に 100 パーセント伝わるものだ。

生命を吹き込む魔法 –Illusion of Life–』p.57 より

 

シルエット

映像作品を作る時『シルエット』を意識して作ることで見やすい映像になります。

『シルエット』とは下の画像のようにキャラクターを黒塗りしたものをいいます。

このシルエットだけを見ても、動きが伝わるようなアニメーションにすることで素早く激しい動きであったとしても、見ている人はその動きについていくことができます。

ミッキーは胴体が黒、腕も手も黒———全身真っ黒だ。彼のアクションを演出しようとすれば、シルエットを使うしかない。それ以外に、アクションを明確にする方法があるだろうか?胸の前に手が来れば見えなくなってしまうし、肩をすくめさせても、黒い肩が頭部の黒い部分に重なれば、肩をすくめさせたようには見えない。ほかの問題が解決できたときで も、例の大きな黒い耳は、常にアクションのじゃまをした。
しかし、この制約は意外な効果をもたらした。一般に、アクションはシルエットで示す方がいい、ということがわかったのだ。俳優は表すべき感情を心得ていれば、シルエットでも それを表せる、とチャップリンは言っている。

生命を吹き込む魔法 –Illusion of Life–』p.60 より

 

ミッキーマウスはほぼすべての作品でシルエットが意識されています。
下の画像をご覧になってください。

『ミッキーマウス! ホットドッグ』よりよくよく考えると横向きのミッキーの耳が画像のような位置にあるのはおかしいと思いませんか?
普通であれば横から見たミッキーの耳は重なった絵になるはずです。この絵だとミッキーの左耳があたまのてっぺんから生えていることになってしまいます。
しかし違和感はなく、むしろ重ねたほうが違和感が表れてしまいます。

じつはミッキーはほぼすべての作品でどの方向から見ても耳が重なることはなく、必ず2つが見えるように描かれています。

手塚治虫の『鉄腕アトム』のアトムの髪形もミッキーの耳と同じことになっています。
手塚治虫はこれを『マンガのウソ』と呼んでいました。

 ところで、アトムの毛は、アトムがどっちを向いてもふたつ見える。 (中略) これはミッキーマウスの耳だって同じだ。
 こういうのをマンガのウソと呼んでいる。
 マンガにとって、ウソはだいじなものだ。ことに絵のウソは、どうしても必要なのである。いまいったアトムの髪の毛だって、見ようによってはひとつにかさねて描かなければならない。だが、それでは、見たところアトムには見えない。
 大あらしの絵がある。家並みが、そろって弓なりにしなっている。あんな家があったらたいへんだ。家のなかはめちゃくちゃだろう。高層ビルもグニャリと曲がって描かれる。あんなになるには風速百メートルぐらいが必要になる。この絵もウソなのだが、こうやって描くと、いかにも大風のように思えるからおもしろい。
 つまり、マンガは、その表現がおもしろければ、どんなデタラメを描いたてもいいというおスミつきがある。

マンガの描き方―似顔絵から長編まで (知恵の森文庫)』pp26-28 より

本にも書かれている通り、ミッキーも角度によっては耳を1つに重ねて描かないといけない場合がありますが、重ねてしまうとミッキーに見えなくなってしまうのです。
そのためミッキーはどの角度から見ても2つの耳が重なることはないのです。

このようにキャラクターをシルエットだけで伝わるデザインにするのも効果的ですし、アクションをしている時になるべく重なる部分を減らし、シルエットだけでも伝えられるような動きにすることで見やすい作品に仕上がります。

 

ディズニー作品での実用例

カメラワークによって大きく見せたり小さく見せたりする表現は多くのディズニー作品に取り入れられています。
小さいウサギのジュディが主人公の『ズートピア』では、主人公の大きさが特徴的なこともありこの表現が多く使われています。

逆にジュディを上から見下ろすカメラワークもあり、周りの動物たちの大きさやジュディの小ささがより分かりやすく表現されています。

映画『ズートピア』(2016)より

カメラワークの次は画面のレイアウトです。
ディズニーが作る画面レイアウトはとても面白く、ある一点に目が行くように計算されています。

下の画像を見てください。
一番初めにどこに目が行くでしょうか?

映画『塔の上のラプンツェル』(2010)より

おそらく多くの人はラプンツェルに目が行ったと思います。

これにはディズニーの計算された画面レイアウトの効果によるものです。

もう一枚の画像を見るとわかるように、カーテンや壁に描かれている絵などの周りのものを使って、ラプンツェルに目が行くようにレイアウトされていたのです。

マンガでいうところの『集中線』の効果が見えない形で取り入れられています。

もう1つ、よりわかりやすい『見えない集中線』の例を挙げます。
下の画像は『モアナと伝説の海』の主題歌『How Far I’ll Go』のワンシーンです。

映画『モアナと伝説の海』(2016)より船や木の枝に加え、子ブタのプアの目線も使ってモアナに目が行くようレイアウトされています。矢印を見た後に、元の画像を見ると確かに集中線があることがわかると思います。

以下の動画で上で紹介したシーンが見れます。
他のシーンでも見えない集中線が使われているのでぜひ見つけてみて下さい!

 

 

まとめ

今回はStaging(演出)についての内容でした。

アニメーション12の原則ではありますが、実写などのアニメーション以外でも使うことのできる内容なので参考例に実写映画を多めに使いました。

今回紹介した演出の表現はほんの一部で、よく使われる表現はまだまだあります。
多くの作品を見ることでどんどん演出表現の知識を入れていくことが大切です。

最終的には自身のオリジナルの演出表現を作品に取り入れることでオリジナリティある作品を作っていきましょう!

2019年9月3日ディズニー, 映像制作, 映画

Posted by Lic