【アニメーション12の原則】Squash and Stretch (潰しと伸ばし)とは -命を吹き込む魔法-

今回はディズニーの本『The Illusion of Life』に書かれているアニメーションの12の原則の『Squash and Stretch(潰しと伸ばし)』についての内容を詳しく説明していきます。

実際に『The Illusion of Life』に書かれている内容や、この原則が使われているディズニー映画のシーンも合わせて説明していきます。

アニメーションの12の原則の内容を簡単にまとめてあるページもあるので、ぜひそちらもご覧になってください。

 

Squash and Stretch(潰しと伸ばし)

ボールが壁にぶつかって跳ね返る時、壁で一瞬潰れその直後に伸びて跳ね返る動きをします。

この動画は時速240kmで飛んできたゴルフボールが鉄の壁にぶつかった時の動きを1秒間に70,000枚撮影できるスーパースローカメラで撮影したものです。
これを見ると潰れと伸びが実際に起こっている動きだということがわかります。

アニメーションでも現実の動きに沿ってSquash(潰し)Stretch(伸ばし)をつけることで、よりリアリティのある生き生きとしたアニメーションにすることが出来ます。

もし、この潰しと伸ばしをつけないとどうなるでしょうか?
とても硬い動きになり、柔らかさは感じられません。
実際に硬いものなら問題はないのですが、『少しでも柔かさのあるもの』や『生きているもの』には多少なりの潰しと伸ばしをつける必要があります。

本の内容を見ればディズニーもこの表現が重要であると考えていることがわかります。

これらの手法の中で一番重要な発見は、〈潰し〉と〈伸ばし〉とよんでいるものだった。
形の変わらないものを紙の上で描き、ある絵から次の絵へと位置を移動させると、ひどく硬いものになり、動きによってそれが強められてしまう。現実の世界では動いたときにそこまで硬く見えるのは、椅子や皿や鍋など、本当に硬いものだけだ。生き物なら、どんなに骨ばっていても、動いているうちに、肉体が許す範囲でかなりの柔軟性を示すのがわかる。

生命を吹き込む魔法 –Illusion of Life–』p.52 より

アニメーションはゼロから作り出したイラストやCGを動かして作るので、実写とは違い現実では当たり前の物理的な動きなどは作り手が意図的に組み込んでいく必要があります

例えば、ただの丸い円だけでボールのバウンドするアニメーションを描くとします。
下の4つの図をみてください。(左から右へバウンドする軌跡を描いた図です)

どれも同じ大きさの円なのにそれぞれ材質や重さが違うように見えませんか?
バウンド量の大きいものは軽いボール、潰しと伸ばしがあるものは柔らかいボールのように見えます。

このように潰しと伸ばしを取り入れることで、物体が『どれくらいの柔らかさなのか』や『どれくらいの重さがあるのか』などを伝えることができます。
ただの円だけでもある程度は伝えることができるので、この円にしっかりとボールの視覚的な情報(サッカーボールでいえば白と黒の柄模様)を与えることで、より説得力のあるアニメーションを作ることができます。

ただこの動きを取り入れるうえで、注意しなければならない点もあります。
この潰しと伸ばしは何も考えずに取り入れると違和感のある動きになってしまいます。
物体が動くときには、その質量は変化しないということを意識しながら潰しや伸ばしを取り入れる必要があります。(『質量保存の法則』的な考えです。)

ディズニーは以下のようなアイデアで質量を保たせるよう意識して絵を描いています。

潰した絵が水ぶくれしたものやずんぐりしたものに見えないように、あるいは伸ばした絵がひょろ長いものや萎びたものに見えないようにするためには,小麦粉が半分つまった袋の形や量感を考えればいい。これは実に秀逸なアイデアだった。小麦粉の袋は、床に落と せばぺしゃっと潰れ、袋の口の両端をつまんでもちあげればだらりと垂れ下がるが、嵩(かさ)自体は変わらない。

生命を吹き込む魔法 –Illusion of Life–』p.53 より

2次元的に考えた場合、ボールの高さを『h』、幅を『w』とすると、潰れた時はhの値が小さくなりますが、その分wの値を大きくし体積が同じになるようにしないといけないということです。伸ばしの場合もこれと同じ考え方で見た目上の体積が変わらないように意識する必要があります。
これはボールだけではなく、潰しと伸ばしを取り入れるすべての物体に言えることで、この原則の重要かつ注意しなければならないポイントです。
数学的に完全一致させなければならないということはありませんが、視覚的にわかるほど質量を変えてしまうことは避ける必要があります。

 

ディズニー作品での実用例

ディズニーをはじめ大体のアニメーションでは潰しと伸ばしが取り入れられています。
しかし多くの場合は、現実に近い動きで取り入れているため少しわかりづらいです。

アニメーション12の原則の『Exaggeration(誇張)』のページで詳しく説明していますが、現代ではそれほど誇張した表現は取り入れられなくなってきています。
ここでは、潰しと伸ばしの表現がわかりやすく取り入れられているディズニー作品をいくつか紹介していきます。

潰しと伸ばしは一瞬の動きなので意識して見ていないと気づきません。
(気づかないというよりは、その動きが当たり前の動きなので違和感を感じないというほうが正しいかもしれません。)
しかし、その一瞬の動きがとても重要な動きです。
この動きを取り入れないと、冒頭でも説明した通りキャラクターはカチカチに見えてしまいます。

下の動きでは潰しと伸ばしの効果でドナルドの体はとても柔らかく見えます。

『ディズニー・コメディ・タイム ドナルドのゴルフデー』より
静止画で見るとわかりやすいですが、しっかりと潰れて、その後に伸びていることがわかります。

この動きを取り入れることで柔らかくスムーズで違和感のない動きになっているのです。

基本的に潰しと伸ばしは、壁にぶつかるボールや今回のドナルドのように物理的に現実でも起こりえる動きに取り入れるものです。
しかし、現実では起こらない動きに対しても、潰しと伸ばしを取り入れることでより効果的に表現できることもあります。

『ピノキオ』では下のキツネのジョンの動きのように『驚きの表現』として潰しと伸ばしを取り入れています。

映画『ピノキオ』(1940)より
ただ普通に振り返るのではなく、一瞬潰れてそのあと頭まで波打つように体が伸びてから振り返ります。


このように驚きの表現に潰しと伸ばしを入れることで、入れていない時に比べより驚いていることを効果的に伝えることができます。

 

まとめ

今回は潰しと伸ばしについての内容でした。

潰しと伸ばしは12の原則の中でも重要度の高い原則です。
この原則を取り入れることで、アニメーションはより生き生きとします。

この原則を知ったうえで様々な作品を見ると、ほぼすべての動作に使われていることがわかります。

いろいろ動きを観察しながら映像作品を楽しむのもオススメです。
ぜひいろいろな作品の表現方法を見て学びつつ、自分だけのオリジナルの表現も探していきましょう!

2019年9月3日ディズニー, 映像制作, 映画

Posted by Lic