【アニメーション12の原則】Straight Ahead Action and Pose-to-Pose Action(逐次描きと原画による設計)とは -命を吹き込む魔法-
今回はディズニーの本『The Illusion of Life』に書かれているアニメーションの12の原則の『Straight Ahead Action and Pose-to-Pose Action(逐次描きと原画による設計)』についての内容を詳しく説明していきます。
実際に『The Illusion of Life』に書かれている内容や、この原則が使われているディズニー映画のシーンも合わせて説明していきます。
アニメーションの12の原則の内容を簡単にまとめてあるページもあるので、ぜひそちらもご覧になってください。
Straight Ahead Action and Pose-to-Pose Action
(逐次描きと原画による設計)
アニメーションが動く原理はパラパラマンガと同じで、少しずつずらした絵を何枚も描き、それらを連続で再生することであたかも絵が動いているように見えるというものです。
そんなアニメーションですが、大きく分けて作り方は以下の2通りです。
・Straight Ahead Action(逐次描き)
・Pose-to-Pose Action(原画による設計)
Straight Ahead Action(逐次描き)
Straight Ahead Action(逐次描き)とは冒頭のパラパラマンガの動画のように、アニメーションの最初から1枚1枚順番に絵を描いていく手法です。
この手法のメリットは、作り手の考える絵をそのままアニメーションにすることができるという点です。
動きを初めから順に描いていくということは、次にどう動くかを作り手が好きに決めることができます。さすがにストーリーの重要なポイントなどは押さえ、物語に影響の無いようにする必要はありますが、それをどう表現するかは作り手の自由です。
そのため作り手のセンスやオリジナリティがでる魅力的なアニメーションを作ることができます。
逆に計画を立てずに描き始めるということでもあるので、描き終えたら思っていた動きと違っていたということも起こりえます。
アニメーションのやり方は大きく分けると2つある。1つは〈逐次書き〉で、その名のとおり、アニメーターはカットの頭から逐次絵を描いていく。1 枚目から次々に描いていき、描きながら新しいアイデアを取り入れ、カットの最後の絵に至る。そのカットに必要な絵やストーリー・ポイントは把握しているが、それらをどう具体化するかは、描き始めの時点ではほとんど決めていない。この方法では、アニメーターは作画の全過程で創意を発揮できるので、絵もアクションも新鮮で、ややおどけた感じに見える。
『生命を吹き込む魔法 –Illusion of Life–』p.60 より
Pose-to-Pose Action(原画による設計)
Pose-to-Pose Action(原画による設計)はポイントとなる絵をいくつか先に描き、後でその間の動きを描いていく手法です。
この手法は『中割り』ともいわれ、ポイントの絵さえ描いてしまえば、その間の動きは他の人に任せることもできます。
上の写真でいうと赤枠部の絵を先に描き、それ以外の部分は”つじつま”が合うように後から絵を描いていきます。ポイントの絵が決まっているため、動きは誰が描いてもほぼ同じものになります。
この手法のメリットは先にポイントとなる動きを描くため、動きの流れが変わることがなく、はじめに計画した通りの動きを作ることができるという点です。動きのポイントが決まっているため、まとまりのあるわかりやすいアニメーションにすることができます。
Straight Ahead Action(逐次描き)のように作り手の個性は出にくいですが、ポイントの絵さえ描いてしまえば、複数人でも作ることができるという利点もあります。
もう 1 つは〈原画による設計〉だ。この方法では、アニメーターはまずアクションの計画を立て、その演技内容をアニメ―トするにはどんな絵が必要かを考え、サイズやアクションにつながりを持たせながらそれぞれの絵を原画として描き、できたカットをアシスタントに渡して中割の絵[訳注:日本では動画]を描かせる。この方法では、絵に入り込んでしまう前にアニメーターは絵と絵の関係を注意深く計算するわけだから、できあがったカットはまとまりがよく、わかりやすいものになる。
『生命を吹き込む魔法 –Illusion of Life–』p.60 より
この 2 つの方法はそれぞれ別種類のアクションに適しているため今でも両方使われます。
動きが想定の軌道からズレるのを防ぐためにPose-to- Pose Action(原画による設計)でポイントとなる動きを決めておきStraight Ahead Action(逐次描き)で間の動き作るというように、2つの手法を統合した方法が使われています。
ディズニー作品での実用例
この原則は基本的なアニメーションの作り方の内容なので、ディズニーは関係なく全てのアニメーション作品に関係してきます。そのため今回はディズニー作品での実用例として、この原則と関係した面白い表現方法を取り入れている作品を紹介します。
アニメーションはいくつもの絵(フレーム)が連続して再生されることで動いているように見せていますが、その絵(フレーム)を数枚に1枚ずつのペースで抜いていくとどうなるでしょうか。
連続して繋がっていた動きの一部が欠けることで、カクカクした動きになってしまいます。
『シュガーラッシュ』は登場キャラクターがほぼ全てゲームのキャラクターです。
その中には『TAPPER』というセガが販売していた2Dドットのゲームが登場します。
参考:アーケードゲーム『TAPPER』(1983)より
映画『シュガー・ラッシュ』(2012)より
『シュガーラッシュ』では『TAPPER』のような2Dのドットゲームのキャラクターには、あえて動きをカクカクさせるという表現を取り入れています。
映画『シュガー・ラッシュ』(2012)より
3Dになった『タッパー』ですが、動きがところどころ飛んでいることがわかります。
また、タッパーの後ろにいるビールを飲んでいるキャラクターたちの動きも、ほぼ2枚の絵だけで完結しそうな動きになっています。
このように、動きをカクカクさせることで3Dキャラクターでありながら、2Dドットらしさを感じさせるキャラクターに仕上げているのです。
まとめ
今回はアニメーションの作り方についての内容でした。
アニメーションの12原則は映像の表現方法だけではなく、今回のようなアニメーションの根本的な内容も含まれています。
基礎的な内容なのでアニメーションを作る人はぜひ覚えておきましょう。
アニメーションがどのように作られているかを知ることによって、ディズニーの実用例で紹介したようなおもしろい表現法を思いつくかもしれません。