【アニメーション12の原則】Timing (タイミング)とは -命を吹き込む魔法-
今回はディズニーの本『The Illusion of Life』に書かれているアニメーションの12の原則の『Timing (タイミング)』についての内容を詳しく説明していきます。
実際に『The Illusion of Life』に書かれている内容や、この原則が使われているディズニー映画のシーンも合わせて説明していきます。
アニメーションの12の原則の内容を簡単にまとめてあるページもあるので、ぜひそちらもご覧になってください。
Timing (タイミング)
アニメーションを作るときは、キャラクターの動きにどれだけの時間がかかるのかを常に考える必要があります。
たとえばチーターとカメがレースをするアニメーションを作るとします。
普通に考えたらチーターのほうが速く、カメのほうが遅くなるように動きを描きます。
ここで特に意味なくチーターよりカメを速くしてしまうと観ている人は困惑してしまいます。
このようにある動きにどれほど時間がかかるのかを考えるのが Timing (タイミング)です。
あるアクションにかかる時間は、それに使われる絵の枚数で決まる。単純で、明確で、表現力豊かな絵を描けば、ストーリー・ポイントはすぐに伝わる。 (中略) キャラクターの性格は進化を続けており、その性格は外見より動きの方に表れていた。キャラクターが無気力か、興奮しているか、そわそわしているか、くつろいでいるかということも、動きの速さで決まった。タイミング、つまり中割りの枚数に細心の注意を払わなければ、キャラクターの演技も態度も描写することはできないのだ。
『生命を吹き込む魔法 –Illusion of Life–』p.68 より
引用部にあるとおり『中割りの枚数』によって動きの速さは変わってきます。
つまりは『中割りの枚数』を意識することがこの原則で重要になってくるポイントです。
この『中割りの枚数』とはアニメーションの絵の枚数(フレーム数)のことです。
詳しくは別の原則『Straight Ahead Action and Pose-to-Pose Action(逐次描きと原画による設計)』で説明しているのでそちらも合わせて読んでみて下さい。
Timing(タイミング)はうまく使うと様々な表現をすることができます。
いくつか例を見てみましょう。
物体の重量感の表現
動きの速さだけでも重量感を表現することができます。
たとえば、箱を持ち上げる動作を想像してみてください。
箱を持ち上げるスピードが速いほど、その箱は軽く見えます。
逆にスピ-ドが遅いほど、箱は重く見えます。
また、巨人のキャラクターの動きはゆっくりにすることでその巨体の重量感を表現することができますし、身体の小さいキャラクターは素早く動かすことでその身軽さを表現することができます。
キャラクターの内面の表現
キャラクターの考えていることや感情のような内面的なものも表現することができます。
キャラクターが振り返るシーンがあったとき振り返る速さがゆっくりだと、そのキャラクターは、誰かに呼ばれて振り返ったような動きとなります。しかし、動きはまったく変えずに振り返る動きを速くすると、後ろで物音がして驚いて振り返ったかのような動きになります。
参考:『Principles of Animation – Timing』より
他にも落ち込んでいるキャラクターの動きはゆっくり、急いでいるキャラクターの動きは素早くすることでキャラクターの内面的な感情を表現することができます。
ここに副次アクションなど他の原則が合わさることで、より効果的にキャラクターの感情を伝えることができます。
このように動きのスピード、つまりはTiming (タイミング)を変えるだけでも様々な表現をすることができます。しかしTiming (タイミング)は速すぎても、遅すぎてもその意味を成しません。
その状況と求められるものに合ったTiming (タイミング)を探すことが重要です。
ディズニー作品での実用例
映画ズートピアではキャラクターの動きの速さが特徴的に表れている、わかりやすいシーンが登場します。
ウサギのジュディたちが緊急でとあるデータを調べてもらうため、ナマケモノのフラッシュのところへ行くというシーンがあります。しかし急いでいるのにフラッシュの遅いこと遅いこと。
映画『ズートピア』(2016)より
※お使いのPC、スマホは正常です。
ナマケモノのキャラクターなので動きはとてもスローに描いています。
これだけゆっくり描くことで、ネタ要素としてPVなどにも取り入れられているズートピアでは有名な名シーンです。
まとめ
今回はTiming (タイミング)についての内容でした。
アニメーションではTiming (タイミング)を常に考えて作る必要があります。
何も考えないで動きを作ってしまうと、動きの速度に統一性がなくなり意味不明なアニメーションになってしまいます。
動きのスピードによって観ている人が受け取る印象は変わります。
より効果的に作り手の表現を伝えられるようなTiming (タイミング)にすることが重要です。