【作品、歴史から見る】ディズニーとピクサーの違いとは

ディズニー映画を見ていると『ピクサー・アニメーション・スタジオ』と表記されているものがありますがご存知でしょうか。映画の冒頭に出てくる『PIXAR』の文字と電気スタンドといえば伝わる方も多いと思います。

「この『ピクサー』ってのは何?」
「ディズニーとピクサーは違うものなの?」

と、名前は知っていても、ディズニーとピクサーの違いを知らない人は多いです。
今回はそんなピクサーとディズニーの違いを、歴史やそれぞれの作品を見ながら紹介していきます。両者の違いを知ることで、より作品を楽しめることマチガイなしです!

 

ディズニーとピクサーの違い

結論から言ってしまうとディズニーとピクサーの違いは「製作スタジオ(会社)の違い」です。

ディズニーは一番の親に『ウォルト・ディズニー・カンパニー』と呼ばれる会社があります。
そして、その傘下にはいくつもの子会社があります。
ディズニーランドやシーなどパーク運営を行う会社、映画の配給を行う会社、映画を製作する会社など様々な会社があります。

以下のページは『ウォルト・ディズニー・カンパニー』傘下の会社一覧(Wikipedia)です。
List of assets owned by The Walt Disney Company
この中の『ウォルト・ディズニー・アニメーション・スタジオ』と『ピクサー・アニメーション・スタジオ』がアニメーション映画でいうところの『ディズニー』と『ピクサー』です。

つまり、このページで扱うディズニーとピクサーの違いは正式にいうと
『ウォルト・ディズニー・アニメーション・スタジオ』と
『ピクサー・アニメーション・スタジオ』の違いという訳です。

ウォルト・ディズニー・アニメーション・スタジオ → ”ディズニー映画”を製作するスタジオ
ピクサー・アニメーション・スタジオ       → ”ピクサー映画”を製作するスタジオ

 
映画『アナと雪の女王』
(2013) より

ウォルト・ディズニー・アニメーション・スタジオで製作された映画は、ディズニー映画と呼ばれ
『アナと雪の女王』『ズートピア』『ベイマックス』『ピーターパン』『アラジン』『リトル・マーメイド』『ライオン・キング』など昔の手描きアニメーションから最近の3DCGアニメーションまでいくつもの有名な作品を生み出しています。
 

映画『トイ・ストーリー3(2010) より

ピクサー・アニメーション・スタジオで製作された映画は、ピクサー映画と呼ばれ
『トイ・ストーリー』『ファインディング・ニモ』『バグズ・ライフ』『カーズ』『インサイド・ヘッド』などの全編が3DCGアニメーションの作品を数多く生み出しています。その中でも『トイ・ストーリー』は世界初の長編3DCGアニメーション映画ということで大ヒットを記録しました。

 まとめるとディズニー(ウォルト・ディズニー・アニメーション・スタジオ)とピクサーは同じ『ウォルト・ディズニー・カンパニー』を親としている子会社同士ですが、映画を製作するスタジオ(会社)としては別ということです。

 

ピクサーがディズニーになるまで

現在ピクサーはディズニーの完全子会社になっていますが、元々は別の会社でした。
2006年5月5日にディズニーがピクサーを74億ドルで買収したことにより、ピクサーはディズニーの傘下に入りました。

そんな別の会社だったディズニーとピクサーですが全くの無関係だった訳ではありません。
ここではピクサーがディズニーの傘下に入るまでの歴史を見ていきましょう。
 

ピクサーが出来るまで

Pixar animation studio』より

ピクサーのはじまりは、『スター・ウォーズ』シリーズを製作していたスタジオの『ルーカスフィルム』です。このスタジオの設立者でもあるジョージ・ルーカスはニューヨーク工科大学からエドウィン・キャットマルを雇い、新たにコンピューター・アニメーション部門を設立しました。この部門こそ後の『ピクサー』です。

当時、ディズニーの製作したSF映画『トロン』を見たジョン・ラセターはCGの可能性を感じCGアニメーションの道を歩んでいました。(※『トロン』は世界で初めて全面的にCGを導入した映画)
CGの背景と手描きのキャラクターを合成させた実験作『Wild Things』という作品を制作したり、CGアニメーション映画の製作プロジェクトに参加したりしてCGアニメーションの技術やノウハウを持っていたジョン・ラセターは、CGアニメーションに精通したアニメーターを探していたエドウィン・キャットマルと出会い、ルーカスフィルムのコンピューター・アニメーション部門に加わりました。

1986年、アップルを事実上のクビとして退職していたスティーブ・ジョブズはこの部門をルーカスフィルムから買い取り『ピクサー』という名前を付け独立会社を設立しました。
設立当時ピクサーの従業員は40名程度でしたが、その中にはエドウィン・キャットマルとジョン・ラセターもいました。
 

ディズニーとの関係のはじまり

ピクサーは設立当初、アニメーションの製作ではなくCGに特化したコンピュータを政府機関や医療機関等を顧客として販売していました。そして、その顧客の1つがディズニーでした。当時ディズニーは手描きアニメーションから効率的に作業のできるコンピュータへ移行するというプロジェクトに取り組んでいたためです。

この当時、ピクサーの業績は良くありませんでした。
そこで商品であるコンピュータの性能を実演するために短編アニメーション『ルクソーJr.』を制作しました。みなさんご存知の電気スタンドのキャラクターです。

短編アニメーション『Luxo.Jr』(1986) Pixar Animation Studios より
その後、関係の続いていたピクサーとディズニーはCG長編アニメーション映画の制作のための契約を行いました。契約内容は「少なくとも1つのCGアニメーションの映画を制作して配給する」というものでした。この契約のアニメーション映画こそピクサーの代表作『トイ・ストーリー』です。

ジョン・ラセターが監督の『トイ・ストーリー』が世界的にヒットしたことにより、ディズニーとピクサーは新たに契約を交わしました。契約の内容は『今後10年間5作品の映画で制作費と興行収入を均等に2分配する』というものでした。そしてディズニーとピクサーは共同で長編のCGアニメーション映画を作っていく関係となりました。
 

ディズニーの完全子会社へ

2006年5月5日にディズニーがピクサーを74億ドルで買収したことにより、ピクサーはディズニーの傘下に入りました。

買収というと聞こえは悪いですが、スティーブ・ジョブズはディズニーの個人筆頭株主となり同時に役員にも就任、エドウィン・キャットマルはウォルト・ディズニー・アニメーション・スタジオ社長、ジョン・ラセターはチーフ・クリエイティブ・オフィサーを兼務することとなり、事実上ピクサーがディズニーのアニメーション映画部門の実権を握りました。

2012年10月30日、ピクサーのはじまりである『ルーカスフィルム』もディズニーに買収されディズニー傘下となりました。

 

作品から見るディズニーとピクサーの違い

ディズニーとピクサーはもともと別の会社であったこともあり、映画のメッセージ性も少し違ったものとなっています。両スタジオの映画作品を見比べながらその違いを見ていきましょう。
 

ディズニー映画

ディズニー映画の多くはプリンセスとプリンス、ヒーローとヒロインが結ばれます。
誰しもこのようなストーリーに憧れを持ち、夢見るものです。

『シンデレラ』『白雪姫』『美女と野獣』『リトル・マーメイド』『アラジン』などなど昔の手描きアニメーション時代の作品の多くはこのような王道ストーリーでした。
ミュージカル要素も多く含み、観ている人に夢を与えてくれる作品が多いというのがディズニー映画の特徴です。

ディズニーランドが『夢の国』といわれているのも頷けますね。

映画『塔の上のラプンツェル』(2010) より 

ピクサー映画

 ピクサー映画はディズニーと比べるとおとぎ話要素は少なめで、プリンセスが出てくる作品も数えるほどしかありません。どちらかといえばファンタジーの世界ではなく、現実の世界を舞台としている作品が多いです。

ジョン・ラセターはあるインタビューでピクサー映画についてこう答えました。

「ディズニーのアニメ作品は、物語もキャラクターも主題歌もディズニーランドの世界にしっくりと当てはまる。ファンタジーランド、トゥモローランド、などみんなディズニーランドの世界。バズやウッディなど、一部ディズニーランドにしっくりとくるものもあるが、 ピクサー作品の全てがそういうわけではない。ピクサーは反骨精神にあふれている」

『魔法の映画はこうして生まれる/ジョン・ラセターとディズニー・アニメーション』(2015) より

反骨精神とは簡単に言うと『世の中の不正や、古くからの風習などに立ち向かう心持ち』のことです。この意味にガッチリとは沿わないかもしれませんが、ピクサーは社会や個人の考える何らかの問題をテーマにした作品が多いです。

『トイ・ストーリー』はおもちゃに視点を当てた作品です。
おもちゃは子供に改造されたりロケット花火で飛ばされたりと乱暴に扱われる一方、子供が成長すると共にいつしか存在が忘れ去られてしまいます。このような現実世界でも見られる子供の行動をおもちゃ目線で見ることで、 深く考えさせられるものがあります。

映画『トイ・ストーリー2(1999)より

 
『ファインディング・ニモ』は海に住む魚に視点を当てた作品です。
人間は海の魚たちにとっては害悪な存在でしかないでしょう。漁船での魚の乱獲、海への不法投棄などによる環境破壊など人間が海の魚に与える影響は計り知れません。これらの問題を海の魚たちの目線で見せることで、こちらも深く考えさせられる作品となっています。

映画『ファインディング・ニモ』(2003)より

 
ピクサー作品のアニメーションの舞台設定は共通して『現実でもあり得る』『現実で起こっているのかもしれない』と思わせる作品となっています。ディズニーピクサーの公式ページにはピクサーの作品について以下のように書かれています。 

「もしも、あなたの知らないうちに、オモチャたちが動き出していたら。」(トイ・ストーリー)
「もしも、人間を怖がらせるモンスターの世界があったら。」(モンスターズ・インク)
大ヒット映画「トイ・ストーリー」の公開以降 20 年以上にわたり、ピクサー・アニメーシ ョン・スタジオは「もしも(What if)」という豊かな想像力からその作品を生み出してきました。

ピクサー アドベンチャー 「もしも」から始まる、冒険の世界 より

ここにかかれている通りピクサー映画は「もしも」の世界が舞台となっています。
ピクサーは何かしらの問題を、現実感(リアリティ)のある「もしも」の世界を舞台にすることで観客に訴えかけているのです。

ディズニー映画の夢を見せてくれるようなストーリーに対し、ピクサー映画はこのような社会や個人の考える何らかの問題をテーマにしたストーリーで観客が見た後に「楽しかった」という感想だけではなく、どこか考えさせられる作品になっています。

 

まとめ

 今回は、ディズニーとピクサーの違いについての内容でした。

ピクサーの歴史や映画のストーリーの違いから両スタジオの違いが理解できたと思います。
現在はピクサーがディズニーの子会社になったことで深い違いは無くなったのかもしれませんが、今でもピクサー映画とディズニー映画は始まりが区別されています。
(※ディズニー映画はシンデレラ城、ピクサー映画はルクソー.Jrから始まる)

ピクサー、ルーカスフィルムの買収によってディズニーはさらに力が強くなっています。
近年CGアニメーション映画に手を付け始めている、『ミニオンズ』などで有名なユニバーサル・スタジオの『イルミネーション・エンターテインメント』とディズニーがどんな関係になっていくのかも気になるところですね。
 

2022年2月28日ディズニー, ピクサー, 作品紹介, 映画

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