【アニメーション12の原則】Secondary Action(副次アクション)とは -命を吹き込む魔法-
今回はディズニーの本『The Illusion of Life』に書かれているアニメーションの12の原則の『Secondary Action(副次アクション)』についての内容を詳しく説明していきます。
実際に『The Illusion of Life』に書かれている内容や、この原則が使われているディズニー映画のシーンも合わせて説明していきます。
アニメーションの12の原則の内容を簡単にまとめてあるページもあるので、ぜひそちらもご覧になってください。
Secondary Action (副次アクション)
『Secondary』は『第二の』『副次的な』『派生的な』『従属的な』などを意味します。
つまり『Secondary Action』とはその名のとおり、メインの動きに対して副次的で、その動きを引き立てるアクションのことを指します。
アニメーションでは多少の誇張をした表現でよくみられます。
お腹を空かせたキャラクターは、お腹に手を当てさする動きをしますし
怒りを感じているキャラクターは、肩を引き上げる動きをします。
また、アニメーションだけではなく現実の世界でも見られる『副次アクション』も数多く存在します。
歩いている時に自然と腕を振る動きをします。
寒い時期であれば、手をポケットに入れたり、息を吹きかけたりして暖めようとします。
こういった動きは全て『副次アクション』です。
このような動きをすることでそのキャラクターが何を考えているかや、どういう感情かなどをよりわかりやすく説明することができます。
あるアクションの狙いは、副次的なアクションで強調できることが多い。悲しみにくれたキャラクターは、顔をそむけつつ涙をぬぐう。気絶から回復したキャラクターは、立ち上がりながら首を振る。取り乱したキャラクターは、落ち着きを取り戻したときにメガネをかける。主要なアクションを支えるこれらの動きは〈副次アクション〉と呼ばれ、主要なアクションに対し常に従属的な立場にある。副次アクションが主要なアクションと対立したり、主要なアクションより目立ったりする場合は、副次アクション自体がまちがって いるか、演出に問題があるといえる。
『生命を吹き込む魔法 –Illusion of Life–』pp.67-68 より
この『副次アクション』を動きに取り入れる時は注意する点があります。
『副次アクション』はあくまでも副次的、つまりはメインの動きに対して付いてくる存在です。
メインの動きをより強く引き出す存在であって、邪魔する存在になってしまってはいけません。
これで難しいのは、別々ではあるが関連している体の各部をうまく動かすことで、まとまった表現を作るところだ。キャラクターの悲しげな表情が主要なアクションになっているときは、涙をぬぐう手の動きは、その表情を支えるように設計しなければならない。こぶしが顔の半分を隠してしまうような派手なジェスチャーは問題外だ。だが動きを抑えすぎると、弱々しくちまちました感じになり、主要なアクションとの関連性がわからなくなる。〈副次アクション〉を主要なアクションの特徴に合わせて設計し、それによって表情をきちんと強調できれば、そのカットはすばらしいものになる。
『生命を吹き込む魔法 –Illusion of Life–』p.68 より
メインのアクションを引き立てるためにあるのが『副次アクション』ですが、本にも書かれている通り、その動きは抑えすぎると弱々しくなってしまいます。
『副次アクション』はメインのアクションとのバランスを考え、よりメインのアクションが引き立つように設計することが重要になってきます。
ディズニー作品での実用例
キャラクターが悲しむときに肩を落とすといういう『副次アクション』があります。
ズートピアではジュディが落ち込んでいることをより表現するため肩を落とす動作を取り入れています。
映画『ズートピア』(2016)より
また部屋に電気をつけず暗い空間にすることで、ジュディの落ち込みがさらに伝わってきます。
この手法は12の原則の『Staging(演出)』です。
リトル・マーメイドでは、逆に喜んだ時に肩が上がる動作が取り入れられています。
アリエルが喜んでいるのは表情だけでも十分に伝わりますが、肩から上を引き上げる動きを取り入れることでより喜びの感情が伝わってきます。
映画『リトル・マーメイド』(1989)より
疲労感を表現するために『ベロ』を出すのも効果的です。
下のシーンのようにベロを出し、くわえて肩を上下させることで、より疲れているように見せることができます。
映画『ふしぎの国のアリス』(1951)より
まとめ
今回はSecondary Action(副次アクション)についての内容でした。
副次アクションを取り入れることで、表現の幅が大きく広がります。
キャラクターに命を吹き込むにはこれらの動きが非常に大切です。
副次アクションは料理でいうスパイスのようなものです。
無くても食べることはできますが、入っているとよりおいしく食べることができます。
しかし、料理に合わなければまずいものになってしまいます。
重要なのはメインの動きという料理の味を引き立てるということです。
アニメーションを作る時はこのスパイスを考えることで、より良い作品になります。
ぜひ、料理がおいしくなるようなスパイスを見つけてみて下さい。