複数出力内の平行移動を親と同じ構造で振り分けるマクロ|CATIAマクロの作成方法

今回は「マクロ案」よりいただいた内容です。
送って頂いた内容は以下のようなマクロです。

ワークベンチ: GSD

マクロ案: 
複数のSURFACEを移動した際(平行移動)、色の情報が移動前と同じにできませんでしょうか?
移動前:形状セットの中に複数の形状セットが存在し、各々に違う色が設定してある。
移動後:同じ形状セットの構成で(できれば)色情報が移動前と同一。
    データムでも問題はない。
他サイトにあった対象移動のものを参考に作成していたのですが、複雑で行き詰まりました。

移動自体はマクロから外して、移動前と移動後の2つの形状セットを比較して、
上から順に同じ色になるように作成していたのですが、なかなかうまくいきません。
ご教授お願いできませんでしょうか?

上記内容からマクロへの入力があまりうまく認識できなかったため少し意図とは違った内容になっているかもしれませんが、「平行移動と親オブジェクトの色設定」「ツリー構成の再構築」のような内容は含んでいるので何らかの参考にはなると思います。

 

マクロの機能

今回作成したのは選択した複数出力の平行移動に対して、親を取得しツリー構成を再構築し振り分けるマクロです。文字だとわかりづらいですが上画像を見れば何となくイメージが付くかと思います。

上画像でいうところの「複数出力.1 (平行移動)」内に入っている「平行移動.1~.10」の親オブジェクトと同じツリー構成になるよう形状セットを新規作成し、Part直下に親オブジェクトと同じ色で振り分けます。

具体的な機能は以下のとおりです。

  マクロの機能まとめ ・選択した「複数出力」内の平行移動を、親と同じ構成の形状セットを作成し振り分ける
※オブジェクトのタイプ上「形状セット」も選択できてしまうので注意
・Part直下に「@ 選択した複数出力名」という新規セットを作成しその中に出力
・振り分けながら親オブジェクトと同じ色を付与する

 

VBAコード

コード全体は下記の通りです。
実行後「複数出力(平行移動)」をクリックするだけです。

 

コード解説

アクティブドキュメント等の定義

まずはじめにアクティブドキュメントをはじめ以降で使うオブジェクト/変数を定義をします。

Partオブジェクト                            :オブジェクト定義/Reference作成等用
HybridShapeFactoryオブジェクト
  平行移動の親オブジェクト(移動元)取得用
Selectionオブジェクト                   ユーザー選択でのオブジェクト取得用
VisPropertySetオブジェクト    平行移動オブジェクトの色変更用
filter / res              :SelectElement2
i                 :カウント変数

 
複数選択(Multi Output)取得

次にSelectElement2メソッドを使ってユーザー選択より「複数出力」を取得します。
VBAでのオブジェクトタイプは「HybridBody」となっており、形状セットと同じ扱いです。

そのためここでは選択したオブジェクトの名前に「”複数出力”」という文字列が入っているかいないかで、複数出力の判定をしています。(デフォルトでは”複数出力.x”という名前のため)

ちなみに上記コードの「mo」は英語版の「Multi Output」の頭文字から来ています。。

 
最終出力の形状セットを作成

次に本マクロでの出力の基準となる形状セットを作成します。
マクロで出力するものはすべてこの形状セット内に作っていきます。

最終出力の基準となる形状セットはPart直下(ツリー第一階層)に作成するようにしています。
またその形状セット名は「mo」の名称の頭に「@」を付けたものにしています。

 
複数出力内ループ(外枠)

次に複数出力「mo」内ループをして全平行移動に対して処理を行っていきます。
「mo」は形状セットと同じく「HybridBody」のため、「For Each hst In mo.HybridShapes」というように書くことで、「hst」の中身順に入れ替えながらループさせることができます。

つまりこのループ内で「hst」に対して処理を行えば、複数出力内のすべての平行移動にそれらの処理を適応できるという訳です。

また、このとき条件分岐でオブジェクトのタイプが平行移動(HybridShapeTranslate)以外のものは無視するようにしています。

以降はこの「mo」内ループの中身についての内容です。

 
hstの親オブジェクト(平行移動前のオブジェクト)を取得

次にループ内の処理です。
まずはhstの親オブジェクトを取得します。
ここでいう親は平行移動の移動前となるオブジェクトのことで、VBAでいう親ではありません

処理内容としては親オブジェクトのReferenceを取得し、それをオブジェクトに変換するということをやっています。

親オブジェクトのReferenceは「HybridShapeTranslateオブジェクト」の「ElemToTranslateプロパティ」より取得することができます。このReferenceをオブジェクトに変換するには「HybridShapeFactoryオブジェクト」の「GSMGetObjectFromReferenceメソッド」により行えます。

 
hstの親オブジェクトのツリー構成を取得

次に取得した親オブジェクトのツリー構成を取得します。
これには「GetHierarchy」という関数を作り、取得できるようにしています。

「GetHierarchy」はコード記載通り、引数として入力したオブジェクトの親となる形状セットの名称をすべて取得することのできる関数です。
取得できるのは形状セットの名称の入った文字列型の配列です。
この関数を使うことで配列の大きさ(中身の数)より、入力されたオブジェクトがツリーの第何層にあるのかも調べることができます。

処理内容としては引数「hs」の親を「Parentプロパティ」で順々に取得していき、オブジェクトタイプが「OrderedGeometricalSet」つまりは形状セットの場合にはそのオブジェクトの名前を取得するということをしています。(オブジェクトタイプはHybridBodyでも問題ないとは思います)

この関数により親オブジェクトの形状セット構成が取得できます。
あとはこの情報をもとにツリーを「output_hb」内に再構築してくだけです。

 
hstの親オブジェクト(平行移動前のオブジェクト)を取得

つぎにツリーの再構築です。
「GetHierarchy」により取得した情報は「hb_names」に入っています。

たとえば「 Part > 形状セット.1 > 形状セット.2 > hs 」というような構成の場合、形状セット.1と.2の2つの名称が格納されています。ただ「GetHierarchy」は子から親に向かって形状セット名を取得しているので、配列の順番は逆転しています。
つまり今の例だと hb_names(0)=”形状セット.2″ , hb_names(1)=”形状セット.1″  となります。

そのためここでは「Step -1」を使って逆向きの「hb_names」内ループを行っています。
コードは少し複雑ですが処理内容は単純で、セット内にhb_names(i)と同じセット名の形状セットが無ければ新規で作成ということを親の形状セットを変えながら繰り返しているだけです。

 
平行移動(Translate)の振り分けと色付け

ループの最後に再構築した形状セット内に平行移動をコピペします。
処理内容は単純にSelectionオブジェクト の「Copy/Pasteメソッド」を使っているだけです。
(振り分けというよりは複製しているだけ)

また、ここであわせて親オブジェクトの色を取得し、振り分けた平行移動に色を付けます。
色の取得と設定はVisPropertySetオブジェクトページを参照下さい。

 

まとめ

今回は選択した複数出力の平行移動に対して、親を取得しツリー構成を再構築し振り分けるマクロについての内容でした。

ご連絡頂いた内容とは少し認識が違ったものになっているような気はしますが、必要そうな内容はすべて盛り込んでいるのでうまいこと書き換えてみて下さい。(どうしてもわからなければまたご連絡ください)

また、本サンプルコードには「親オブジェクトの取得」や「ツリーの再構築」のような他のマクロでも使えそう内容もちらほらあったので、それらを別のマクロで使ってみるとよりCATIAマクロの理解が深まると思います。
 

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 CATIAマクロを本気で勉強するなら

2024年8月26日CATIA, CATIAマクロ

Posted by Lic